風邪
まさか天下の保健委員が風邪をひくとは思わなかった。
「善法寺も風邪なんてひくんだ」
私の膝の前には同い年で同じ保健委員の善法寺伊作。
いつものきっちりした姿は見る影もなく、額に冷たい手拭をおいて寝込んでいる。
「保健委員様は看病はしたことはあっても実際にひいた事はあるのかな〜」
「…、お前、俺をなんだとおもってる?」
「あえていうならバカだと思ってる♪」
「……も、いい」
熱のせいか言い返す気力も無いようで。
なんだかつまらないような。
「それよりお前、くの一がここにいていーのか?」
「学園中寝込んでるんだもん。保健委員は駆り出されてんの。一番頼りのお方もここで
こーやって寝込んじゃってるわけですから?」
「ん、そう」
善法寺はまた黙った。
最低限の言葉しか口に出さず、後は少し荒く呼吸をする。
はれた喉が疼くようで、苦しそうに何度も咳き込む。
「善法寺大丈夫〜?」
「う〜…あんまり…」
あ〜あ〜あ〜。涙目だよ。
「善法寺なんか欲しいもんとかある?」
「…いや」
「熱は?」
「ん……」
かすかに差し出された額に、呆れながらも手を置いた。
熱。
人間ってこんなに体温上がるもんだったっけ?
「ちょっと氷とってくるよ」
立ち上がろうとすると、善法寺に腕をつかまれた。
力強くは無かったけど、引き止めるには充分で、立つのは止めた。
善法寺はぼうっとした目で私を見ていた。
「お前の手の方が、気持ちいい」
そう言って私の手を握った。
そして気持ち良さそうに目を閉じた。
私もそのまま、軽く握り返してやった。
意外に大きくて骨ばった手だった。
風邪のときはなんでも我侭言えばいいよ。
こんなときくらいはとことん甘えさせてあげるから。
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