恋人時間




演習場から帰るとき、不意に見かけた。
三木ヱ門がくの一と唇を寄せ合っているのを。
その二人の頭が離れあったとき、不意に合った。
私と、三木ヱ門の、

目が。



名前も知らないくの一に告白された。
だけど断った。するとくの一は俺の唇に自分のそれを合わせてきた。
互いのそれが離れて、ふと目線をそらすと、合った。
俺と、の、

目が。



頭より先に体が動いていた。



頭より先に体が動いていた。




逃げた。



追った。



わからない。

わかってる。






は自室に飛び込んだ。
何故自分が逃げたのか。いきなりのことに戸惑った。盗み見してるようで嫌だった。
そうじゃない。わからない。
わからないけど、なぜだか無性に悲しかった。
涙こそ出なかったけど、胸が苦しかった。
は壁に蔦って頭を抱えて座り込んだ。
外は夕陽。茜色に染まる。
愛し合う恋人達に相応しい時間だ。



三木ヱ門はを追った。
何故くの一の唇を避けなかったのか。わかっていたんだ。に思われることはないだろうって。
確かにそうだ。でも判った。
例えそうでも自分はのことを愛しているんだと。
には拒否されるかもしれない。けれども言っておきたい。
三木ヱ門はの部屋の前に立ち止まった。
外は夕陽。茜色に染まる。
愛し合う恋人達に相応しい時間だ。




、入るぞ」
襖の外から三木ヱ門の声が聞こえると同時にその本人の姿も確認できた。
は一瞬びくりとしたが何事も無かったようにすぐに姿勢を整えた。
「三木、声かけるんなら返事を聞いてから開けてよ」
「ああ」
今まで見た事もない素直さには戸惑う。
「わ、わかればいいんだけど…」
三木ヱ門は襖を閉めて、の前に腰を下ろした。
二人の間に重たい沈黙が流れる。
三木ヱ門はをまっすぐに見つめ、は自然ながらもそっと目をそらしていた。
暫くして、先に口を開いたのは三木ヱ門だった。
「見たんだろ」
静かに、落ち着いた声で。
また、の胸が苦しくなる。
「う、うん…ごめん…」
「告白された」
「そ、そう……」



胸が痛い。
心が苦しい。




「あの子ならいいと思うよ。私も知っているけど気立てもいいし、可愛いとこも…」

「俺は良くないんだよ」

の声をさえぎって言い放った三木ヱ門の目はあまりにも真剣だった。

「やっと、目合わせてくれた」
三木ヱ門はそっと微笑むと意を決するように小さな深呼吸をすると、




「俺はが好きだ」






そう言った後に、今度は三木ヱ門が下を向いてしまった。
少しだけの胸が苦しくなくなった。
そのかわり、今度はばくばくと鼓動が早くなっていく。

「他の奴じゃダメだ。が好きなんだ」

もういちど、今度はやけっぱちにでもなったように三木ヱ門が言った。

「三木……」











外は夕陽。茜色に染まる。



恋人達に相応しい時間だ。







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