ドクドクドクドクドク…。



必死だった。
建物の屋根に打ちつける雨の音も耳に入らないほど必死だった。
放っておけば死んでしまうかもしれない。
いや、処置をしたとしても、ひょっとしたら同様かもしれない。
傷の深さも、状態も、器具の無さも場所の悪さも最悪であった。
だけど、死なせてたまるものか。
ただただその一心で、私は治療を続けた。















どくどくどくどくどく…。



『ギャァー!』
『若様ぁー!』
『若様が、若様が射られた!!』
『そこの茂みからだ!暗殺者だー!』
『あぁぁぁあぁあー!痛い、痛いィィ!』
「どいて!早くこれを飲ませて!」
『若様!痛み止めでございます!はやくお飲みに!』
『うぅっ、ウッ……。………!あぁあァぁあアぃいィぃぃー!』
『若様!?』
『一体どうなってるんだ!』
「そんな…、ウソ………」







毒毒毒毒毒…。




『まさか…、若様がお亡くなりになったなど…』
「大老!ちがうんです!私はただ薬を…」
『もういい!聞きたくない!』
「……大老………」
『若が亡くなった、それが事実なのだ…』




ドクドクドクドクドク…。




『本当に行くのか』
「…あんたか」
『すりかえられていたのか?』
「ええ…。けど、私の責任だわ」
『若は亡くなった。暗殺者の身元もわかった。もうすぐ戦が始まる。
…医者が必要だ…、もうすこし留まれないか』
「私のほかにも名医は山ほどいるわよ」
『………』
「それに、私もうここにはいれないし、…いたくないわ」
『………』
「さよなら…、元気でね」






ドクドクドクドクドク…。



すり返られていたとはいえ、この手で人を殺した。
命を救うべき医者が、この手で毒を服用させた…。
私にはもう、医者を続ける資格なんてない。
もう、私なんて信じられない。
もう、続けていく自信なんてない。
もう、医者なんて、辞めよう…。





もう、里に帰ろうと思っていたのに。

もう、医者の道具は持たないと決めたのに。








































































「死なせやしない」




























































































































ざんざんと雨は降りつづく。




激雨と隔たれた廃寺の中の静寂に、二人分の影が横たわっていた。
男の腹には、真っ白い包帯が巻かれ、その横には、女が壁にもたれて座っていた。




二人とも、とても安らかな寝息をたてていた。

















































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