ああ、何て幸せなんだろう!
演技でもいい!
夢でもいい!
明日死んだっていいや!
利吉さんと一緒に町を歩けるなんて!


疑似夫婦 第参話



賑わう大通り、駆け回る子供たち、並ぶ店先。
その中を、私は利吉さんと一緒に歩き回る。
三歩後ろについていくなんて、本当の夫婦みたいじゃない!?
自分で考えておきながら、ついつい顔を赤らめてしまった。


「ははははははいっ!!」

突然、利吉さんに名前を呼ばれてびっくりする。
よ、呼び捨て!?
あ、そうか、夫婦だもんね。
ちゃん」なんておかしいか。
じゃあ私も「あなた」って呼んだ方が良いのかな…?
………は、はずかしいっ!むりっ!

…?聞いてる?」

うわっ!また変な顔されちゃった!
これで二回目だよ…。

「はいっ!聞いてます!」
「うん、だったらいいんだけど。とりあえず宿を取ろうと思うんだけど、
 ここでいいかな?」

そう言って、利吉さんは左手のそれなりの宿屋を示した。

「はい、利吉さんがいいと思うところでいいです!」
「じゃ、入ろうか」
「はい!」

そして、二人で肩を並べて暖簾をくぐったのでした。







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