THE DAYS6-葛藤






三郎が放心状態から立ち直ったのは夜もふけた頃であった。






翌日。
「ってなわけで今日は悩める青少年、鉢屋三郎君のお悩みです」
「僕は最近気になる子ができました。彼女は優しくて明るくて
僕にとってまるで太陽や花のような存在です。けど僕は恥かしくって
彼女になかなかアタックできません。どうしたらいいでしょうか?」
「んー、これは重症ですね。今の貴方に必要なのは、勇気と愛!
他の男に取られないうちにとっとと関係を築いてしまいましょう!
さ!鉢屋三郎くん!彼女に交際を申し込みませう!」
「申し込まない黙れ失せろ」
盛り上がる五年ろ組の教室の面面に三郎は冷めた声を浴びせた。
窓辺にもたれて空を見上げる彼の姿はまさに恋する少年そのもの。
その姿に今川率いるお悩み相談室員や雷蔵達がやれやれと体で示して見せた。
「しっかし、鉢屋がこれほどに純情だったとは……」
「全くだな。俺、鉢屋がのこと好きだっての今川から聞いたとき明日は
槍が降るだろうなって思ったもん」
「っていうか三郎がここまで奥手ってのも信じがたいよね」
「あー、思う思う。こー気に入った子がいたならとっとと食っちゃう奴
だと思ってたよ…」
「っていうかはあいつのことどう思ってるんだろう?」
「結構苦手なんじゃない?鉢屋、に結構つっけんどんだったし」
「女は、多少の強引さもあるけど優しい男についていくものだからな」
「そうそう…って、立花先輩!!??」
「耳元で大声出すな」
「うぁっ!潮江先輩も!いつの間に!?」
いつのまにやら談笑の円の中に六年生の立花仙蔵と潮江文次郎が紛れていた。
二人はにこやかかつ楽しそうにどうも〜と手をふって見せる。
「あいつはいいな、私には勝らずとも髪の触り心地もいいし」
触ったんですか!?五年群がどよめく。
「やっぱ女ってのは柔らかいのがいいよなあ」
柔らかい!?ますます騒ぎが広がる。
「抱きごこちいいしな」
ショックのあまり失神者が出た。
「高原ー!しっかりしろ!傷は浅いぞー!!」
「冗談に決まってるだろうが」
六年生二人は余裕で楽しげな笑い声を上げた。
円の外から明らかに嫌悪の顔を浮かべて三郎は尋ねる。
「何しに来たんですか」
「からかいに」
がっくりと肩を落とし、三郎はその場から立ち去ろうとする。
すると仙蔵がその前に立ちはだかった。
「他に何か用ですか」
「あいつはそういう事をあまり意識してないからなあ」
仙蔵はうんうんと一人頷く。
「誰にも裏表なんてないていうのも理想だよな」
「先輩」
「男だったら誰でもちょっと手ぇ出したくなるはずだ」
「ちょっと」
それも聞こえない振りをして仙蔵は続ける。
「いつの間にかこの中の誰かとくっついてたりするかもしれんぞ」
「なっ、」
動揺が思わず口に出る。
三郎慌てて無表情に戻した。
「敵は多いぞ、鉢屋」
仙蔵の端正な顔に妖艶な笑みが映った。
「奪られないように気をつけろよ」
三郎の耳元で仙蔵は囁く。
それから先程の表情は無かったようににっこりと笑い、漆黒の髪を翻して去って行った。
文次郎も三郎の肩を叩いてからその後に続いた。

「っていうか立花先輩、の事詳しくないか?」
「ああ…なんか、まるで恋人について語るみたいで…」
はっ、とその場のものが凍りつく。
ぎぎぎ、と音でもしそうな動作で教室の入り口に立ち尽くした三郎を見る。
固まるどころか背中に横線を背負って灰色になった三郎が室内であるのに
なぜか枯れ葉を舞い散らして吹き荒れる風の中にたたずんでいた。
「あの、さ、さっぶろ〜?」
恐る恐る声をかける級友の言葉も聞こえないようで、そのまま猛風をひきつれて
鉢屋三郎は教室から立ち去っていった。












その後、また自室にて悩み悶える鉢屋三郎の姿が今川によって発見されたという。















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