THE DAYS7-廊下
他の男に取られないうちにとっとと関係を気付いてしまいましょう!
奪られないように気をつけろよ。
昨日の今川と仙蔵の言葉が頭の中で果てしなく繰り返されている。
角を曲がろうとすると、誰かにぶつかった。
松葉色の制服。
「おや、鉢屋」
今はちょっと会いたくない人ナンバーツー立花仙蔵だった。
「……どうもすいませんでしたそれでは」
「まあまあ待ちなよ鉢屋」
そのままやり過ごそうとする肩を仙蔵ががっしと掴んだ。
その腕には、ウキウキ!面白いもの見つけました!という力が込められていた。
「先輩…、俺で遊ぶのはやめてくださいよ…」
「いやあ、今のうちに遊んどかないと、今度はいつ遊べるか分からんからなあ」
とりあえず乾いた笑いを漏らす。
「で、どういう風に玩ばれるんですかねえ俺は」
「んー、その表現が妖しいことは置いといて、特に何もないかもしれんなあ」
「それなら、俺は失礼しますので」
と、三郎が元来た道へ去りかけたとき。
「そうそう、は四年の前原に迫られてるらしいぞ」
「な…っ!」
振り向いたときには仙蔵の黒髪は廊下の角に消えていた。
「立花先輩、それでは…っ!!」
はっ、と急いで身を隠した。
仙蔵と一緒にいたのは、六年生の七松先輩と善法寺先輩と、
だった。
そのまま姿は見せないようにその四人の会話に聞き耳を立てる。
「仙蔵も明後日、外出?」
「いや、私は残るつもりだ」
「も一緒に行こ〜」
が小平太に背中からぎゅっと抱きしめられていた。
なのには、特に気にもとめずそのまま楽しげに話を続ける。
むかつく。
三郎の眉がひくっと動いた。
「つーか、こへ重い」
「う〜。ひどい〜」
「ひどくないひどくない」
仙蔵はの髪をさらりと撫でて言った。
「じゃあ、またな」
去り際、立花先輩はこちらに向かって愉快そうに笑っていった。
くそ、なんてやな性格だ。
憎らしい。
が、羨ましくもある。
俺もの髪を…、て違う違う違う。
そうじゃなくて。
いかん。末期か?
くそー、立花先輩、が…。
〜〜〜。
「三郎さん、どうしたんですか?」
はたと気付けば隣に。
「………、どぁっ!!??」
「うぉっ!?な、なんですかいきなり…!」
「あー…いや、なんでもない」
なんとかいつものポーカーフェイスを取り繕って応対する。
そうですか?と去りかけたの前を手でさえぎった。
「なんですか」
自分より頭一つ分近く小さいは、どうしてもやや上目遣いになってしまう。
思わずキたものをこらえて、平静に声を出した。
「あのさ、あの…敬語は止めてくれ」
「は、突然何で」
疑問には首を捻る。
やば。率直過ぎ?
「あー、その、敬語はあんま使ってほしくないんだ。その、そうそうそうそう、
なんか落ち着かない!タメでいいから!」
文脈がおかしいという事は自分でもよっっくわかった。
頭の中が混乱してきたのを見透かしたのかどうか、は微かに笑って
「わかりました。じゃあタメ語でよろしく」
と言った。
その時のわずかに口元へ当てられた手の動きにも敏感に反応してしまう。
指が綺麗だ。
俺………………重症だ。
「あの…三郎……さん?」
放心状態に陥っていた俺には不審そうに声をかけた。
「三郎でいい。で、何?」
「あ、…と、サブロウ」
「なんでそんな不自然なんだ」
「いや、やっぱり慣れないと言いにくいなあ、と」
「そうか」
妙な沈黙が流れる。
どうしたものかと思案していると、が口を開いた。
「あ、明日、実技の実習あるんだって?」
「あ、ああ」
「じゃあ、うん、頑張ってね!」
「………ああ」
「…え…と、それじゃあ」
艶のいい茶色がかった髪を靡かせて俺の前を通って行った。
その姿に、さっきの仙蔵の言葉が蘇ってきた。
「呼び出されたって本当か…?」
ぴたりと足が止まった。
それからくるりと軽やかに身を翻す。
「仙蔵から聞いたの?」
その姿は、他の男にも欲されているのか?
なんだか無性に腹が立った。
「行くな」
はっきりと、低い声で告げた。
「どうして?」
はどうしてそんなことを言うのかわからないという風に眉をひそめる。
「行くだけでも行くべきじゃ…」
「聞かなかったことにしろ。絶対行くな」
「でも…」
「とにかく、行くなよ!!」
の返答は聞かずに、三郎も元々行くはずだった職員室へ足を向けなおした。
自分以外の男といると腹が立つ。
今川の言うとおり、やっぱり嫉妬だろうか、これは。
嫉妬だろう。きっと。
こんなに一人の女に惚れ込んで執着した事あったか?
反語。
というか、「惚れた」ことってあっただろうか?
……これもまた、反語。
ひょっとして、俺、初恋?
三郎は深い溜息をついた。
「くっそー、前原の奴に先越されちまったよ!」
見ると、中庭の木の陰で紫の制服の四年生が二人、話をしていた。
四年の中で最も下世話だと今川から聞かされていた二人だ。
三郎はそのまま通り過ぎようかとしたが、足が止まった。
「でもが承諾するかはわかんねえだろ〜」
「けどあいつ力あるからな〜ひょっとしたら…」
「っかー!俺も体がでかかったらなー!」
「帰ってきたら覚悟しとけって感じだよな〜はは…え、ひぃっ!」
「はっ、鉢屋先輩!!」
気が付くとそいつらの片割れの襟首を掴んで持ち上げていた。
ぎりぎりと布に指が喰い込む音がする。
「…どこだ……」
「、ぅぅ…、な、何がですか…?」
「だ!その野郎とはどこにいる!!」
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