憎炎
闇夜の黒が村の赤い炎に照らし出された。
家屋が燃え上がり人々の死体が転がった狂った光景。
その真っ只中、一軒の家から叫び声と物が破壊される音が響き渡った。
「逃げろ!、早く逃げろ!!」
「邪魔するならお前を先に殺してやる!」
「、早く!逃げろ――――!!」
1人の幼い少女、は外に飛び出し、小さな体で必死に走り出した。
しかしそのすぐ後に飛び出してきた斧を持った女、母に追いつかれる。
足が絡まりその場に倒れる。
斧を持ち上げた母がゆっくりゆっくりにじり寄っていく。
「、後はあんたなの。あんただけなの。あんたを殺せばあたしは助けてもらえるのよ。母さんのために死んでくれるわよね?
あたしはあんたを今まで育ててやったじゃないの。これがあんたのできる唯一の親孝行なのよ!!」
は腰が抜けて動けない。必死に手で後ろへ後ろへと下がるが、震えた体では意味はなかった。
母親は勢いよく斧を振りかぶり、それを振り…、
ガキンッッッ!!!
何かが斧をはじいた。
斧は母親の腕から離れ遠い地面に転がった。
「やめろ!」
男の声が火の中から聞こえてきた。
しかし母親はに飛び掛り首を強く締め上げた。
「あっはははは、これで、これで…あたしは…」
「かあ・・・さ・・・やめ……」
ぎりぎりと締め上げられ、呼吸も小さくなっていく。
もうだめだと思った瞬間、ざくっと言う音とともに首にかけられた手の力が消え、何かがの横に倒れこんだ。
「大丈夫か!?」
1人の男がに走りより、を抱き起こした。
せきこみながら自分の横に倒れこんだ「何か」に目をやる。
着物ににじみゆく血。
紅く染まり行く母親の体。
「ひっ、」
「…すまねえ、お前さんを助けるためにはこれしか…」
はもう息が無い母親の体をそっと抱き起こした。
つい先日までは、自分を可愛がってくれていたのに…。
一緒に、仲良く暮らしていたのに…。
「兄上は?」
は立ち上がると元来た道を引き返した。
「おい!嬢ちゃん!!そっちは…!」
母親が開け放したままの戸の中には駆け込んだ。
「兄上………………!」
「!、見るな!!」
男はの眼を体ごと、それから離した。
兄の体と頭は既に切断され、襖や畳には血潮が吹き上げられていた。
こういう現場に慣れた男でも吐き気がこみ上げてくるこの場を、少女はすべて目のあたりにしてしまっただろう。
男はを抱えてとにかく外に出た。
すると、はす向かいの家屋からもう1人忍び装束の男が飛び出してきた。
「大木!こっちの家も悲惨だぜ。どこもかしこも血だらけで肉片まで転がってやがる」
「三原!それ以上言うな!!」
「え、あっ、どうしたんだ、その子!!」
三原も大木の腕の中のに気付いたらしい。
しまった、という顔をして口をつぐんだ。
大木はそっとに問い掛けた。
「嬢ちゃん、大丈夫か?」
大丈夫なわけがあるものか。自分の母親と兄の躯を続けざまに目にしたのだから。
泣き出すことを覚悟して大木はの顔を覗き込んだ。
しかし、の目からは涙のかけらも無かった。乾ききった瞳には目の前にいる大木の姿も映っていなかった。
焦点もあわずにただ呆然と立ち尽くしたままだ。
「大木…どうするんだ…」
「どうもこうもあるか!!とにかく連れて行く!!」
大木はを抱き上げ炎が燃え盛る村の中を同僚とともに走り抜けた。
数時間後には、そこは村があったことなど信じられないほどの焼け野原となった。
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