バシッ
『汚い手で触らないで頂戴!』
「イタッ…」
『五月蝿いわね、いいから離れなさい。
ほんと、うっとうしいんだから!!』
「…う…えーん、えーん」
『…』
「兄上…兄上ぇ…」
『おいで、ほら、。泣かないで』
「兄上、どうしては叱られるの?が悪い子だから?」
『そんなことないよ。母さんはあんな風にいうけど、大丈夫。
にはいつだって、おれがついているんだから』
「ほんとう?」
『ああ、ずっとそばにいて、のこと守ってあげるよ』
「約束だよ?兄上。約束だよ!」
『殺してやる、皆殺せば、あたしは助かるんだから!』
『、逃げろ、逃げろー!!!』
「兄上!兄上ぇー!!!!」
『いいから、、早く逃げろ―――!!!』
「兄上ええええええ!!!」
一緒にいてくれるって言ったのに。
ずっとそばにいるっていったのに。
嘘つき。
嘘つき。
兄上の嘘つき!
…違うよ。
兄上は嘘なんてつかないよ。
今までだってそうだったじゃない。
兄上はと一緒にいる。
ずっとのそばにいる。
兄上はとずっと一緒だよ。
「もうやめて!」
THE DAYS23-暗闇
兄上はいない。
もういない。
だって、兄上は死んじゃったから。
母さんに殺されたんだから。
私を庇って死んじゃったんだから。
会いたくても会えないんだから。
だから思い出すな。
思い出しちゃ駄目。
思い出したくない!
兄上がいたら、私はそれだけでよかった。
兄上が私といてくれたら。
兄上が傍にいてくれたら。
それなのに、どうして兄上は死んじゃったの?
何で私を置いて消えてしまったの?
私は、邪魔だったの?
私がもっと強い子だったら、兄上を守れた?
もし、私がいなかったら?
もし、私がいなかったら、兄上は死なずに済んだ?
もし、私がいなかったら、村は滅ばずに済んだ?
もし、私がいなかったら、母さんは…。
「…いや」
『殺してやる!!!』
「…ア…」
『皆殺してやる!』
「やめて…」
『どきなさい!あたしの邪魔をするんじゃないよ!!』
「やめてったら…!」
『どかないなら殺してやる!!』
「やめて、やめて、やめてやめてやめてやめて!!!」
ダン!!!
やっと、声が消えた。
…壁を殴った、拳が痛い。
「ふ…うぇ…ふぇぇ…」
こんな事なら思い出したくなかった。
一生忘れたままでいたかった。
孤独に耐えられない。
罪悪感に耐えられない。
私なんかいなくなっちゃえばよかったのに。
私が死んでしまえばよかったのに…!
…うそ。
私が死ねばよかった?
嘘。
死にたくなんてなかったくせに。
兄上と自分がいたらよかったんでしょう。
母さんがいなくなってしまえばよかったのに、って思ってたくせに。
望みは叶ったじゃない。
母さんはいなくなったじゃない。
代償に、村と、大好きな兄上を連れて行かれたけど。
「…嘘……違う…!違うッ!」
私のせい?
私が望んだから?
私が、私が母さんを狂わせたの?
私が村を滅ぼしたの?
私が兄上を殺したの?
「違う…いや、兄上、兄上…!!」
助けて。
助けて!
私は悪くない!
私のせいじゃない!
助けて、兄上…!
誰か、私を助けて…。
誰か。
誰か………!
()
「………さぶ、ろう…?」
最初、悪態をつかれた。
突然、呼び捨てで呼んでくれといわれた。
倉庫で襲われたのを助けてくれた。
「レンアイしてみるか」って、手を差し伸べられた。
それから、つきあうようになった。
楽しかった。
満たされてた。
でも…、私を置いて、行っちゃった…。
けど、目覚めたときには…。
「…………さぶろ…」
大木先生!
びくっ、と肩が竦んだ。
三郎の声だ。
それはすぐに、雅之助との会話に変わった。
大木先生、はどこですか?
鉢屋、お前どうして…。
に会わせてください!
今は駄目だ、ひとりにしてやってくれ。
今じゃなきゃ駄目なんです!
おい、鉢屋!!
すぐに部屋の戸の前に気配が立った。
「!」
部屋の外から三郎の声が響く。
(来ないで…)
助けて。
手をかけたか、内側から棒をつっかえた戸が揺れる。
(誰にも会いたくない…)
私を、助けて。
「!」
(もう、ほっといて…)
「!」
私を、救って。
勢いよく、扉が開いた。
「…」
光が、見えた。
渇愛← →光
PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル